シロアリ豆知識

普段は見ることのないシロアリですから、

「シロアリって蟻でしょ？」と思われる方がほとんどではないでしょうか？

今日は、家を食べるシロアリと、お庭や公園、道端など、どこでもよく見る黒蟻との違いについてお話をしたいと思います。

シロアリと蟻、呼び名は同じ「アリ」で、
共に社会性昆虫ですので「蟻」の仲間のように思えますが、シロアリは蟻ではなくゴキブリの親戚で、黒蟻とは昆虫学上も全く別に分類されている生き物です。

シロアリはゴキブリ目でゴキブリと同じグループに分類されていますが、黒アリはハチ目で、蜂の仲間とされています。

同じ昆虫網ですが、「目」では違うグループに分類されていて親戚とはいえない遠い関係ですね。

シロアリは木に含まれる「セルロース」、蟻は、主には「糖類」を栄養としています。

名前も似てますが、姿も似てますね。

でも、よく見ると、

シロアリの胴体は寸胴ですが、黒蟻は胴体にクビレがあります。

シロアリの触覚は、数珠状になっていますが、黒蟻はくの字型です。

また、シロアリと蟻は、生まれてから成虫になるまでのライフステージも異なります。

シロアリは蛹というライフステージがなく卵から孵化後、幼虫からそのまま成虫になる「不完全変態」ですが、

蟻は、幼虫から蛹を経て成虫になる「完全変態」です。

【※完全変態：卵→幼虫→蛹→成虫という昆虫のライフステージ】

シロアリは、蜂や蟻と同じ昆虫という括りで社会性昆虫として知られますが、

シロアリは、蜂や蟻とは違う昆虫のグループに属している関係です。

名前はアリでも遠い関係なんですね。

ちなみに、蜂や蟻、シロアリのような社会性昆虫は、繁殖が分業されていて「不妊階級」が存在します。

社会性昆虫の集団の中心には、女王・王のような生殖活動に専念する階級の個体が存在し、

その周りに働きバチや働きアリのように労働する階級などがあります。

「（不妊）階級」があるかという点で考えると、

シロアリと親戚のゴキブリも集団で生活をしていますが、

ゴキブリは蜂や蟻、シロアリのように、（不妊）階級が存在せず、

社会性昆虫ではないことが理解できますね。

でも、シロアリはゴキブリと親戚なのに、社会性昆虫ではないの？と腑に落ちない方もいるのではないかと思います。

実は、海外の月刊科学雑誌『The Science of Nature』で紹介された論文では、
世界で唯一、南米エクアドルで社会性のあるゴキブリの集団、「女王ゴキブリ」の存在が確認されているとのこと。

海外のある研究では、恐竜時代には、ゴキブリも社会性を持っていたと言われており、
恐竜絶滅後の氷河期などの時代に、何がしらの原因で、シロアリだけが社会性が残り、ゴキブリからは社会性が失われてしまったのではないかと考えられています。

シロアリとゴキブリは近縁関係なのに、ゴキブリには社会性がないという理由に、「なるほどぉ！」と思いますね。

≪参考≫

・https://link.springer.com/article/10.1007/s00114-020-01694-x

・https://www.researchgate.net/figure/The-only-eusocial-and-only-herbivorous-cockroaches-Melyroidea-aff-Magnifica-and-M_fig2_344026751

・https://nazology.net/archives/71259

ちなみに、シロアリは、ゴキブリの中でも、枯死材を餌とする「キゴキブリ」が最もシロアリに近縁と言われています。キゴキブリは、シロアリと同じように、後腸内で多くの原生生物と共存しています。キゴキブリは、シロアリがゴキブリから進化する前より原生生物と共生していたと考えられています。（参考：本郷雄一,東京工業大学大学院生命理工学研究科,2011)