一夫多妻?ヤマトシロアリの成長期コロニーについて
羽アリが羽を落とした後は、雄雌がペアとなって新たな巣を作りますが、
巣を作った一番初めの王・女王は、「創設王」「創設女王」と呼ばれ、
創設生殖虫として後から生まれる生殖階級のシロアリ(補充生殖虫)とは区別されています。
羽アリが陸に降りて、運よく営巣できたカップルは、お互いの体を擦り付けたりと本当に仲睦まじい様子がみられます。
観察・実験用のシロアリの飼育ケース内の湿度調整を誤って女王が死んでしまったことがありますが、
土を掘ると、創設王が死んだ創設女王の体にずっと寄り添っていた光景をみたこともあります。
創設期は新婚夫婦のように仲が良いんですよ。
しかし、上の写真のように一頭の王に対して複数の副生殖虫がみられます。
仲の良い夫婦でしたが、王は何頭もの妻をもっている状態です。
蜜月が終わり創設王と創設女王は別居状態なのでしょうか?
実は、これは、女王が自らの遺伝子を残すために、王の遺伝子のない雌の生殖虫を生んでいるということが最近の研究で分かっています。
女王は有性生殖と単為生殖を使い分けており, 二次女王は単為
生殖で生産し, ワーカーや有翅虫は有性生殖で生産していることが判明した。(松浦健二. 日本生態学会誌)
生殖で生産し, ワーカーや有翅虫は有性生殖で生産していることが判明した。(松浦健二. 日本生態学会誌)
一般に、創設女王は王よりも寿命が短いと言われており、成長期に補充女王に役割が引き継がれます。
そのため、創設女王は、雄の遺伝子のない自分の分身である補充女王を生んでおき、巣が存続できるように備えています。
上の写真は、創設女王は死んで、補充女王に役割が引き継がれた状態です。
シロアリの世界は一夫一妻制なのが一般的ですが、
ヤマトシロアリの世界では、巣の存続をかけて一夫多妻なんですね。
カテゴリ:生態