天然植物性薬剤の抗蟻試験
先日、お客様より同居の孫がアレルギーのため青森ヒバに含まれるヒノキチオールの抗蟻効果に着目した天然植物性シロアリ防除液での施工ができないかと相談がありました。
そこで、施工者としては健康面と防災面から居住の安全性を作る責任があるため、お客様から施工依頼のあった天然ヒバ精油液の抗蟻効果を検証するための独自試験を行いました。その結果を報告します。
限定接触試験
当社が主に使用しているシロアリ防除剤は「ピリプロール2.4%フロアブル剤」です。
「ピリプロール2.4%フロアブル剤」の所定量を薬剤処理した板に15秒間接触させたところ、3時間半で半数が、6時間後に全頭がノックダウンし、試験終了時には全頭の致死を確認しました。
同じように、天然成分のヒバ精油液を薬剤処理しておいた杉板に15秒間接触させたところ、4時間後には全頭ノックダウンしましたが、その後2頭が復活し、最終的には1頭が生存しました。
天然成分ですので、致死効果は化学合成薬剤に及ばなくても、この点を理解した上で対策を行うのであれば良いのではないかと思いました。
次に、暴露時間を長くすれば、致死率も高くなるのではないかと仮定し、処理面への接触時間を3分間として、1回目の試験と同じ薬剤処理済みの杉板を使って、再度試験を行いました。
ところが、KT50 (半数がノックダウンするまでの時間)は、1回目の試験よりも長くなり、試験終了時の致死率も70%となりました。(前回は90%)
翌日にもう一度試験を行ったところ、なんと、試験終了時の致死率は0%で、試験開始からノックダウンをする個体は一頭も確認できませんでした。
ヒバに含まれるヒノキチオール成分の抗シロアリ性能ですが、
(公社)日本木材保存協会が発行する、木材保存士資格取得時の入門書にも、
木材の代表的な抗シロアリ性成分の一つとして、青森ヒバ材に含まれるヒノキチオールがある。青森ヒバ材のイエシロアリによる摂食では、ヒノキチオール成分が多く含まれる心材部分はほとんど加害されていない (田中裕美:木材の劣化.木材保存学入門)
と説明されており、青森ヒバ精油の防蟻施工への応用が期待できますね。
しかし、一方では、このようなヒバ精油に関する研究論文が・・
ヒバ精油に含まれるヒノキチオールは、昇華性や光分解性があり、気温が上昇する夏季においては、ヒバ精油で処理された木材表面からは成分が徐々に揮散する可能性がある。ヒバ精油を処理した木材表面に紫外線を照射した場合には光分解と化学変化により急激にヒノキチオールの減少が生じる可能性がある(酒井温子2008)
と指摘されています。
したがって、酒井氏の研究論文から考察すると、今回、ヒバ精油液で処理した杉板を使った限定接触試験の2回目の試験でKT50が1回目の実験の2.6倍長くなり、3回目の実験ではノックダウン率も致死率も0であったのは、ヒバ精油液の昇華性、光分解性、紫外線による化学変化の影響で、ヒノキチオール成分が急激に減少したためと考えられます。
木材保存剤の性能は、木材の表層に存在する有効成分量に影響されるため、製剤途中では、薬液付着性や浸透性、効力の持続性を高くできるような剤型と組成を見出して成分調整が行われています。しかし、成分調整を行わずに天然成分をそのまま使用する場合には、実環境下で生じる分解や化学変化によって効果の持続に大きく影響する可能性があると考えられます。
木材食害虫の防虫剤が求められる性質・性能には対象昆虫に対する効果に加えて、予防効果を発現するために木材中や床下土壌中での耐候性および残効性も含まれる。(飯島倫明:木材保存剤)特に、シロアリのように家屋を著しく食害することがあり、防災面への影響のある食害害虫に対しては、薬剤効力の安定性が重要となります。
したがって、今回の実験結果のように薬剤効力の持続が気温や光の環境に大きく左右されるヒバ精油液をシロアリ対策として使用する場合では、防蟻施工だけでなく防蟻施工後も定期的な点検を行う必要があり、シロアリの侵入が確認された場合に早期に駆除を行う維持管理型のシロアリ対策としてお客様と打ち合わせをすることが必要であると考えます。
追伸:供試虫の準備が間に合わず、施工を終えた後に試験を行いましたが、
安心してください。このようなことも想定しており、お客様のお家をシロアリ被害から護るための総合的なシロアリ対策を行っております(^_^)
西日本シロアリ防除
稲葉
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